目利めきき)” の例文
『——と、まあ、わしの老婆心じゃ。然し、そちの技倆も、加藤殿のようなお目利めききが、認めて下さるように迄なって、わしも共々欣ばしい』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然ニ先頃西郷より御送被遣候吉行の刀、此頃出京ニも常帯つねにおび仕候。京地の刀剣家ニも見セ候所、皆粟田口忠綱位の目利めきき仕候。
「向うの話ばかり聞いていても駄目、実地に行って様子を見て、それから抵当かたになりそうなものの目利めききをした上で……」
下さる人はそれほど目利めききという訳でもありませんから、古くない慣れの少いのもあるので、絹の打紐うちひもを通して、中指にかけて握っているのを皆が笑いますと、自分も笑いながら
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
こんな風に云って、恐ろしくひねこびた、土釜どがまの化けたような物を、大事そうにひねくってみせたりする。欲の深いくせに人が好くて、自分はたいそうな目利めききだと信じているところに愛嬌あいきょうがあった。
ひやめし物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
僕の目利めききでは。
神尾は平野老人の言い方が少ししゃくにさわったようでありました。しかしこの老人はこの席の中での刀の目利めききでありましたから、多少は警戒しました。
自分の家に伝わる刀の目利めききなどもしてもらって、すっかり柳斎を信じて疑わない容子なのだ。さっそく、数日後には
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時になって、始めて誰も祖父の目利めききの違わなかったのを感じました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
しかし、目利めききに見させても、筆蹟は、まぎれなき定房卿のお筆だという。そこでなお、めんみつな審議に及ぶと、或いはという信憑しんぴょうも持たれなくはない。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
備前屋の主人は、この五人連れの若い侍たちを見て、こんなふうに目利めききをしてしまいました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ゆうべ、手先の眼八は、免許町めんきょまち刀研師かたなとぎし大黒宗理おおぐろそうりの店へ寄って、ある兇行に使われた小柄こづか目利めききをして貰っている間に、思いがけない拾いものにぶつかった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そ、そんならば老人のお目利めききは?」