痩犬やせいぬ)” の例文
それが私のかみさんであり、その後からやくざな男が、バケツや荷をいつぱい抱へて、痩犬やせいぬのやうについて行つた。
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
塹壕ざんごうにおる兵のはなしによると、敵のあなへ、いもや握り飯など抛ってくれると、痩犬やせいぬが跳びつくように、台兵のやつが幾つも首を突出すそうじゃ。そこをぽんぽん狙い撃ちするんじゃという。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちぢれ痩犬やせいぬ見えて
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と、こぶしを振り上げると、橋の袂へ痩犬やせいぬが腹で土を摺って逃げてゆく。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)