田口たぐち)” の例文
紙屋だったと云う田口たぐち一等卒いっとうそつは、同じ中隊から選抜された、これは大工だいくだったと云う、堀尾ほりお一等卒に話しかけた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
野尻湖のじりこ近くの田口たぐち駅をすぎた頃、客車のしきりの扉が開いて、車掌がきんちょうした顔をして入ってきた。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
丸い瓦斯ガス田口たぐちと書いた門の中をのぞいて見ると、思ったより奥深そうなかまえであった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
旅団参謀は鼻声に、この支那人をとらえて来た、戸口にいる歩哨をびかけた。歩兵、——それは白襷隊しろだすきたいに加わっていた、田口たぐち一等卒いっとうそつにほかならなかった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その拍子ひょうしに長い叫び声が、もう一度頭上の空気をいた。彼は思わず首をちぢめながら、砂埃すなほこりの立つのを避けるためか、手巾ハンカチに鼻をおおっていた、田口たぐち一等卒に声をかけた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)