生墻いけがき)” の例文
私の部屋の窓からは、いまにもくずれそうな生墻いけがきを透かして、一棟ひとむねの貧しげな長屋の裏側と、それに附属した一つの古い井戸とがながめられた。
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
生墻いけがきから叔父さんに切つて貰つた大事なステツキは、三番目の足といふ風に役に立つてゐました。
生墻いけがきのやうにあをあをと身につなぐべく。
季節の馬車 (旧字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
自分があんなにも愛した彼の病院の裏側の野薔薇のばら生墻いけがきのことを何か切ないような気持になって思い出していた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それから、っと、まるで足が地上につかないような歩調で、サナトリウムの裏手の生墻いけがきに沿うて行った。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そう、それ等の少女たちの形づくった生墻いけがきはちょうどお前たちにそっくりだったのだ! ……
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
生墻いけがきに沿うて、いろんな外国種のも混じって、どれがどれだか見分けられないくらいに枝と枝を交わしながら、ごちゃごちゃに茂っている植込みの方へ近づいてゆくと、それらの茂みの上には
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)