甘薯いも)” の例文
勇がふかし甘薯いも頬張ほおばッて、右の頬をふくらませながら、モッケな顔をして文三を凝視みつめた。お勢もまた不思議そうに文三を凝視めた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
る時は、ごはんの代りに甘薯いもを食べたり、貰つたくりをゆでて、純子ちやんにはやはらかくんで、口うつしに食べさしたりしたこともありました。
母の日 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
昨日の売れ残りのふかし甘薯いもがまずそうに並べてある店もあった。雨は細く糸のようにそのひくき軒をかすめた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
少年の議論家は素肌すはだの上に上衣うわぎを羽織ッて、仔細しさいらしく首をかしげて、ふかし甘薯いもの皮をいてい、お政は囂々ぎょうぎょうしく針箱を前に控えて、覚束おぼつかない手振りでシャツのほころびを縫合わせていた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)