甘睡かんすい)” の例文
……ああそういえばすこし疲れた、わたしはこれから楽々と無我の眠りに遊べるが、人間に与えられたこの甘睡かんすいすらできずに悶々と今日の空のもとされて暮す人もあろう。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その本職即ちしかるのみ、余の言ふところの意はこれに異なり、夏の休暇サムマア・ヴァケーションは、衆庶に与へられたる安息日なり、飽食と甘睡かんすいとを以て、空耗すべきにあらず、いずくんぞ自然の大堂に詣でて
山を讃する文 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
櫺子れんじの窓いッぱいにさしこんで、蒲団ふとんの上に日かげの縞目しまめを描いていますが、その陽光と了戒の刀に枕元を守られている当の人は、春眠暁を知らずという甘睡かんすいの度を超えて、こんこんとしたまま
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)