猶且なおか)” の例文
此光輝ある時期に際会しながら、猶且なおかつ厭世哲学を説くハルトマンの如きは畢竟ひっきょうずるに一種の精神病者に過ぎないと彼は断言した。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼もまた若き日は当時の大名なみには女も犯しめかけも蓄えたかも知れぬが六十をすぎた今となって猶且なおかつ他人の恋人に思いをかけるような粘りづよさがあったかどうか。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
時に、例の提灯である、それが膝のあたりだから、つまは消えた、そして、胸の帯が、空近くして猶且なおかつ雲の底に隠れた月影が、其処にばかり映るように艶を消しながら白く光った。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
猶且なおかつ暴風にまれ、らるる、その瞬間のおもむきあり。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)