物代ものしろ)” の例文
木樵きこりや炭焼き小屋をうかがっては、持ちあわせの物代ものしろを食にえて来たり、野葡萄のぶどうだのあけびのツルなども曳いて、かつて九重ここのえの大膳寮では見もされぬ奇異な物も
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
追われてからは、木から落ちた猿だ。田舎は、おれに働きにくい。変現出没のきかない所だ。将門まさかど、ヘンな顔をするなよ。盗みに行くわけではなく、立派に物代ものしろ
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
物代ものしろは何なりと与えるが、従者どもに朝糧あさがてを。また、おあるじには、白粥しらがゆなとさし上げて給わるまいか
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
楊雄はさてと、巧雲の髪から抜き取ってきたかんざしを出して、前払いの物代ものしろとした。そしてさっきの若い男が何か面白そうなので、それをも加えた車座の四人でやがて飲みはじめた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かような紙では、代金とも物代ものしろともいただきかねますと、自分でお返しに伺ったところが、怪しからぬ奴、ひかえておれとのことで控えていると、まもなく検非違使からお役人が来ましてね
「そんな物代ものしろではつまるまい。現金をやる。ほれ、ここにこう積んでおく」
何を投げたのか、腰をさすッている酒屋男のほうへ、物代ものしろをほうるが早いか、彼はもう桶のフタをとっていた。そしてかわいた巨獣が流れに鼻を沈めるような姿で、がぼ……がぼ……がぼ……。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いったい、どこの誰と、江口へなど、通い始めたのか。遊びの物代ものしろなど、どこから出るのか。怪態けたいではあるぞ。それを、明らさまに述べねば、捨ておかれぬ。……ありのままを申せ。ありのままを」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「童の着けている狩衣かりぎぬと太刀だけでも、物代ものしろ以上の値はふめる」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)