牝鶏ひんけい)” の例文
旧字:牝鷄
古人が「女子ト小人ハ養ヒ難シ」と言ったのは、牝鶏ひんけいあしたすることを固く戒めたのも、今となって、神尾主膳にはひしと思い当る、現にあのお絹だ——
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
既に久しく学校の宿直室を自分等の家として居るので、村費で雇はれた小使が襁褓おしめの洗濯まで其職務中に加へられ、牝鶏ひんけい常に暁を報ずるといふ内情は、自分もよく知つて居る。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
隅田川以東に散在する材木堀の間に挟まれた小さな町々の家並みは、やがて孵化ふかするひなを待つ牝鶏ひんけいのように一夜の憩いから目醒めようとする人々を抱いて、じっと静まり返っていた。
勝ずば (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
勿論ただ牝鶏ひんけいあしたするのではなしに、或る範囲の承認せられたる任務があったのである。古代日本人の間においては、女は一段と神に近くまた一段と祖先の霊に親しいものと認められていた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
六一臣として君をつすら、天に応じ民ののぞみにしたがへば、六二しう八百年の創業さうげふとなるものを、まして六三しるべきくらゐある身にて、六四牝鶏ひんけいあしたするを取つてかはらんに、道を失ふといふべからず。
牝鶏ひんけいのあしたすると言うて、牝鶏めんどりが差し出るからよ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)