牛輦うしぐるま)” の例文
牛輦うしぐるまわだちは、御所の裏門をきしみ出るなり、石を噛み、泥濘ぬかるみかしいで、ぐわらぐわらと揺れ進んで行くのだった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
起つと共に、裏門へ通じる道のわかれに、ぐわらぐわらと牛舎うしやの方から一輛の牛輦うしぐるまが引出されて来た。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牛輦うしぐるまが、前から来た。悪路に揺れて、輦の簾が、音をたてている。泥濘をよけつつ、それと、すれちがう時、小次郎は、簾のすき間から、チラと見えた麗人の白い容貌かんばせと黒髪に、胸が、どきっとした。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)