煤黒すすぐろ)” の例文
露八は、うしろへ手をのばして、煤黒すすぐろ行燈あんどんを膝へよせた。カチッ、カチッと燧石ひうちの青い火がとぶたびに、お蔦の白い横顔がに入る。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後ろの丁字街の突き当たりには、破れた匾額へんがくがあって「×亭口ていこう」の四つの金文字きんもじ煤黒すすぐろく照らされていた。
(新字新仮名) / 魯迅(著)
くつはみな赤と緑色の羅紗らしゃわれたところの美しい履を穿きます。そういう立派なよそおいであるに拘わらず顔には折々煤黒すすぐろい物を塗って、見るからが実に厭な粧いです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
 田舎においては、すべての人人が先祖と共に生活してゐる。老人も、若者も、家婦も、子供も、すべての家族が同じ藁屋根わらやねの下に居て、祖先の煤黒すすぐろ位牌いはいを飾つた、古びた仏壇の前で臥起ねおきしてゐる。
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
煙突の鉄の林や、煙皆、煤黒すすぐろき手に
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)