焦躁いらだ)” の例文
滝人の頭は、しだいに焦躁いらだたしさで、こんがらがってきた。もしこの機会を逃したなら、あるいは明日にも、十四郎は片眼の繃帯をらぬとも限らないのである。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
手ぬるし手ぬるしむごさが足らぬ、我に続けと憤怒ふんぬの牙噛み鳴らしつつ夜叉王のおどり上って焦躁いらだてば、虚空こくうち満ちたる眷属、おたけび鋭くおめき叫んでしゃに無に暴威を揮うほどに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
街の一端に近きポヽロの廣こうぢにつなを引きて、馬をば其うしろに並べたり。馬は早や焦躁いらだてり。脊には燃ゆる海綿をり、耳後には小き烟火具はなびを裝ひ、わきには拍車ある鐵板を懸けたり。
水右衛門の方には助太刀の敵役かたきやくがあらわれて来た。これらの人形も三方から兵助を取り囲んで斬り込んでくるので、それを使っている紋作は自分が敵に囲まれているように焦躁いらだってきた。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)