無蓋むがい)” の例文
汽車の線路から、或は、石塊を積載して通過した無蓋むがい貨車の上から、転落したのではないことは其の位置によって明かである。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なるほど、前方五百メートルのところを、たしかに、私たちと同じようなスピードで、街道を走って行く無蓋むがい自動車があった。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
無蓋むがいの二輪馬車は、初老の紳士と若い女とを乗せて、高原地帯の開墾場かいこんじょうから奥暗い原始林の中へ消えて行った。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
T氏とハース氏とドイツ大尉夫妻と自分と合わせて五人の組を作ってこの老人の厄介やっかいになることにした。無蓋むがいの馬車にぎし詰めに詰め込まれてナポリの町をめぐり歩いた。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
機関車の後には、四りやうばかりの無蓋むがいトロッコが連結して、その四台のトロッコには、米俵や、野菜や、郵便や、塩叺しほがますが積み込まれて、山へ行く営林署の樵夫きこりが五六人、寒さうに俵に腰をかけてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
無蓋むがい自動車の運転台に乗っていた若い一人の警官が、ヒラリと地上に飛び降りると、私の前へツカツカと進み出てきました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
湯屋ゆやの番台の様な恰好をした、無蓋むがいの札売り場で、大きな板の通り札を買うと、僕等はその中へはいって行った。(僕はとうとう禁令を犯したわけだ)中も外部に劣らず汚い。
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
森谷牧場もりやぼくじょう無蓋むがい二輪の箱馬車は放牧場のコンクリートの門を出ると、高原地帯の新道路を一直線に走っていった。馬車には森谷家の令嬢の紀久子きくこと、その婚約者の松田敬二郎まつだけいじろうとが乗っていた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
そこのやみにヘッドライトを消した一台のトラックがとまっている。荷物をのせてしまうと、二人の男は運転台についた。恩田は人形箱と一緒に無蓋むがいの箱の中にうずくまった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「積んでました。材木を積んだ無蓋むがい貨車が、確か三台あった筈です」
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)