無禄むろく)” の例文
旧字:無祿
文「いや/\名なんどを名告なのるような者ではありません、無禄むろく無官の浪人で業平橋にる波島文治郎と申すものでございます」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
蜂須賀家の家来であって、家来の束縛そくばくはうけていないし、無禄むろくの浪士に似て浪士でもない。いわば、山野へ放ち飼いにされていた客分である。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柳生谷に古い豪族ではあるが、今は無禄むろく郷士ごうしにすぎない。当然、柳生父子おやこは庭へまわって、地上に座を占めた。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
莫大ばくだいに金がる、それは困ります、中々わし無禄むろくの浪人で金のる木を持たんから六七百両の金はない。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
出屋敷の倉番、帳方ちょうかた、舟手、軽子頭かるこがしら、その他、ここで諸役についている者は、おおむね無籍むせき無禄むろくの浪人だった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百姓たちは、田にあって働ければ、五こくを産む手をもっておるのに、その暇をつぶして、わしの如き、無禄むろくの隠士の住居すまいなおすに集まって来てくれておる。——勿体ないことである。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)