炉辺ろべり)” の例文
旧字:爐邊
その夜、上平館かみひらやかたの松の丸のあの座敷の、大きな炉辺ろべりに向い合って坐っているのは、お雪ちゃんと宇治山田の米友でありました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また安蔵と梅市とは、それから教えられた小屋へ急いで来てみますと、成程、ヨハンが言ったとおり、二人の人間が正体なく炉辺ろべりに長くなっている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
座敷は其方此方そちこち人声ひとごえして、台所にはにぎやかなものの音、炉辺ろべりにはびたわらいも時々聞える。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あり合はせた草履ぞうり穿いて出る時、亭主が声を掛けて笑つた。其の炉辺ろべりには、先刻さっき按摩あんま大入道おおにゅうどうが、やがて自在の中途ちゅうとを頭で、神妙らしく正整しゃんと坐つて。……胡坐あぐらいて駕籠舁かごかきも二人居た。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)