さかの)” の例文
根本義にさかのぼったらそれほどに感じていない敬太郎もこう聞かれると、行がかり上そうだと思わざるを得なかった。またそう答えざるを得なかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
否、其前逢つた時既に、と思ひした。代助は二人ふたりの過去を順次にさかのぼつて見て、いづれの断面だんめんにも、二人ふたりの間にもえる愛のほのほを見出さない事はなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私の父母ふぼ、私の祖父母そふぼ、私の曾祖父母そうそふぼ、それから順次にさかのぼって、百年、二百年、乃至ないし千年万年の間に馴致じゅんちされた習慣を、私一代で解脱げだつする事ができないので
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
結婚問題と云うより僕と千代子を取り巻く周囲の事情と云った方が適当かも知れない。それを説明するには話の順序としてまず千代子の生れない当時にさかのぼる必要がある。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もしこの気易きやすい状態が一二時間も長く続いたなら、あるいは僕の彼女に対していだいた変な疑惑を、過去にさかのぼって当初から真直まっすぐに黒い棒で誤解という名のもとに消し去る事ができたかも知れない。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)