淫売婦いんばいふ)” の例文
旧字:淫賣婦
淫売婦いんばいふ裏店うらだなのかみさんのような人達と同じ屋根の下に画作することを胸に浮べて、あの連中の実際の境遇をあわれまずにはいられなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
自分は、やがて画塾で、或る画学生から、酒と煙草と淫売婦いんばいふと質屋と左翼思想とを知らされました。妙な取合せでしたが、しかし、それは事実でした。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
キリストが淫売婦いんばいふにぬかずくのもこの曠野のひとり行く道に対してであり、この道だけが天国に通じているのだ。
堕落論〔続堕落論〕 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ゆがんだ燭台しょくだいに立っているろうそくの燃えさしは、しくもこの貧しい部屋の中に落ち合って、永遠な書物をともに読んだ殺人者と淫売婦いんばいふを、ぼんやりと照らし出しながら
全てか、然らずんば無か、私のこうした極端な気持が一度、共産党と喧嘩けんかすると、今度は淫売婦いんばいふのふところに飛びこませた。私は再び、そのような極端な気持になったのである。
野狐 (新字新仮名) / 田中英光(著)
……ああ、もうたくさん! そんな茶番ちゃばんはあたしの性に合わないの。……あたしは、あす、快遊船ヨットを降りて、淫売婦いんばいふにでもなっちまう。そのほうが、結局、人間らしい生活というもんだわ
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そして、それが娼婦しょうふ淫売婦いんばいふとに限られてあった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
まるで淫売婦いんばいふの様な感じさえするのだ。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私は全然無教養な淫売婦いんばいふと、「人生の真実」とでもいったような事を大まじめで語り合った経験をさえ持っている。無学な老職人に意見せられて涙を流した事だってある。
親友交歓 (新字新仮名) / 太宰治(著)