淫卑いんぴ)” の例文
事実は決してそうでない。自分ばかりを愛していると思っていた君江の如きは、事もあろうに淫卑いんぴな安芸者と醜悪な老爺ろうやと、三人たがい嬉戯きぎしてはじる処を知らない。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
銀座通の裏表に処をえらばず蔓衍まんえんしたカフエーが最も繁昌し、又最も淫卑いんぴに流れたのは、今日こんにちから回顧すると、この年昭和七年の夏から翌年にかけてのことであった。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
細長き画面の上部を二階となし階段によりて男女の相逢あいあふさまもしからず。柱絵は春信の後継者たる湖龍斎に至りますます複雑多様となり、またますます妖艶淫卑いんぴの画題を選みき。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)