淡白うすじろ)” の例文
波は漾々ようようとして遠くけむり、月はおぼろに一湾の真砂まさごを照して、空もみぎは淡白うすじろき中に、立尽せる二人の姿は墨のしたたりたるやうの影を作れり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その淡墨と濃墨との接する処は極めて無造作むぞうさであつて、近よつてこれを見ると何とも合点がてんのゆかぬほどであるが、少し遠ざかつて見ると背中の淡白うすじろい処が朦朧もうろうとして面白く見える。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
淡白うすじろい空に黒い輪郭を画している寺の屋根。その上方ににじのような輪をかぶった黄色な月がかかっている。通用門の両側には提灯ちょうちんを持った僧二人立ちいる。舞台月光にてほの暗し。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
その淡白うすじろくちびる啖裂くひさかんとすばかりにみて咬みてまざりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)