浩澣こうかん)” の例文
畢竟ひっきょうするに戯作が好きではなかったが、馬琴に限って愛読して筆写の労をさえ惜しまず、『八犬伝』の如き浩澣こうかんのものを
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
わたくしは病床で『真書太閤記しんしょたいこうき』を通読し、つづいて『水滸伝すいこでん』、『西遊記』、『演義三国志』のような浩澣こうかんな冊子をよんだことを記憶している。
十六、七のころ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
吾が党、この学に従事する、ここに年ありといえども、わずかに一斑をうかがうのみにて、百科浩澣こうかん、つねに望洋ぼうようたんを免れず。実に一大事業と称すべし。
慶応義塾の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
買って帰って読んだ浩澣こうかんな医書によって見ても、その手術は割合に簡単なものであるのを知り抜いていたから、その事については割合に安々やすやすとした心持ちでいる事ができた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
越後の豪家高頭仁兵衛たかとうにへい氏が、山岳辞彙ともいうべき浩澣こうかんな原稿をかかえて、志賀先生を訪問せられたとき、横浜にいる人が、こんな紀行文を発表している、山を知っている人らしいから
高谷塾というは『日本全史』というかなり浩澣こうかんな大著述をしたその頃の一と癖ある漢学者高谷龍洲の家塾であって、かなり多数の書生を集めて東京の重なる私塾の一つに数えられていた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)