注連繩しめなわ)” の例文
新字:注連縄
これは自分だけの推定だが、ソメという語の起りは注連繩しめなわなどのシメすなわち占有の占ともと一つであったらしい。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
部屋の床の間には御嶽山蔵王大権現ざおうだいごんげんと筆太に書いた軸が掛けてあり、壁の上には注連繩しめなわなぞも飾ってある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
門松、注連繩しめなわを焼く煙りが紫いろに辻々を色彩いろどって、初春はるらしい風が、かけつらねた絣の暖簾のれんたわむれる。
が、今夜は例年いつもの暦屋も出ていない。雪は重く、降りやまなかった。窓を閉めて、おお、寒む。なんとなく諦めた顔になった。注連繩しめなわ屋も蜜柑屋も出ていなかった。
雪の夜 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
市民は御重態の発表を知るや、一刻も早く御悩の去らんことを祈りつつ、街々は迎春の用意に商店の軒先も注連繩しめなわを張り、吉例の松飾りを立てつつ安き心はなかったのです。
形はどうあろうともこれが霊であって、むしろ人間以上の力で夜昼の守護をするものと信じられていたことは、日向のシオリジメも注連繩しめなわも同じことであった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
昨十四日は年越しの祝いでお菊は型ばかりの松飾注連繩しめなわを自分で外した後、遅れた年賀の義理を済ませに小梅の伯母のところへ行くとか言って、賑やかに笑いながら正午少し過ぎに家を出て行った。
神木に張り渡した太い注連繩しめなわに、木の鉤をけて歌をうたいつつくのである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)