泥炭でいたん)” の例文
アーストロフ ストーブなら泥炭でいたんけばいいし、小屋なら石で造ればいいじゃないか。
加藤子爵とそれから子爵の随行の吉川真水という人と、幌向ホロムイ泥炭でいたん地に採収を試みた、この日は山草家の木下友三郎君も同行せられることになった、ちょっと話が前に立戻るが木下君は
利尻山とその植物 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
あきらかでびた調子が谷一面に反射して来る真中を、黒い筋が横にうねって動いている。泥炭でいたんを含んだ渓水たにみずは、染粉そめこいたように古びた色になる。この山奥に来て始めて、こんな流を見た。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四方絶壁のうちに閉ざされたる野心、また崩壊によって何かの結果を望む者、なお最下層にあっては、火に燃えやすい泥炭でいたんともいうべき下層の群集、それらがすなわち暴動の要素である。
汽鑵車はちょうど巨人のあえぐように、大きな音を立てて泥炭でいたんの煙を吐きながら渋谷の方へ進んで行く、高谷の乗っているクラスがちょうど遠方シグナルのあたりまで行ったころ、思い出したように
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
所々に奇警な観念がこもっていて、しかもそれが荒削りの状態のままですぐに変形させられています。泥炭でいたん坑の上に鬼火が燃えてるようなものです……。そして彼は実に不思議な頭脳の所有者です。
たゞ一かけの泥炭でいたんになつた
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)