泥濘ぬかり)” の例文
髪は二寸も延びて、さながら丹波栗の毬を泥濘ぬかりみちにころがしたやう。目は? 成程独眼竜だ。然しヲートルローで失つたのでは無論ない。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
なう悲しやの一雫、道の泥濘ぬかりも帰るさは、恋しき土地の記念かたみかと。とかくは背後うしろへひかるる跡を、心深くも印せしなるべし。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
樹立こだち森々しんしんとして、いささかものすごいほどな坂道——岩膚いわはだを踏むようで、泥濘ぬかりはしないがつるつるとすべる。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
笠島かさじまはいづこ五月さつき泥濘ぬかり
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)