汽罐きかん)” の例文
新字:汽缶
今やその煙筒からは燃え残りの煙草たばこほどの煙も出ていなかった。汽罐きかんに浸水したのはもうずっと早いことだったろう。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
彼は、先ず汽罐きかんを開けて自らの着衣ちゃくいと下駄とをその中に投入して燃やし、由蔵の部屋で由蔵の着衣をそのまま失敬して天井裏に忍び込んだのであった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこからは、自分じぶんおとけないほどの、ゴウゴウなりとどろく、汽罐きかんのうなりおとや、車輪しゃりんのまわるおとや、いろいろの蒸気機関じょうききかん活動かつどうするひびきをききました。
ぴかぴかする夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その原因は、この場所が日本鉄道隅田川線荷物列車踏切の南に隣りいるゆえ、汽車が通行の際、汽罐きかんより吹き上ぐる湯気が木の葉に掛かって凝結し、雫となって落つるのであったそうだ。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
さてこそ、これと前後して、インド政府に身売のつもりで英国から押渡った汽船ファルコン号は、あわれ生新しい汽罐きかんも両輪もはぎとられて、ただの帆船としてやっと買手がついたという。