水苔みづごけ)” の例文
就中なかんづく薄い水苔みづごけのついた小林平八郎の墓の前に曼珠沙華まんじゆしやげの赤々と咲いてゐた景色は明治時代の本所ほんじよ以外に見ることの出来ないものだつたかも知れない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
の川の川原かはらの石はいつも白い様な色合を帯びてゐて水苔みづごけ一つ生えない。清く澄んだ流であるが味が酸いので魚も住まず虫のたぐひも卵一つ生むことをしない。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
いつも水につかつてゐる青い髪や、青い長い口ひげは、もはや水苔みづごけのやうにどろどろにふやけて、顔中には、かぞへ切れないほどのしわが、ふかくきざまれてゐました。
湖水の鐘 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
呑んだ樣子はないでせう。それに、あの邊は水苔みづごけでお濠の底は見えないけれど、近所の人に言はせると、思ひの外淺いさうで、腹ん這ひにでもならなきや、溺れる筈はないといふことで
けれども壷穴つぼあなの標本を見せるつもりだったが思ったくらゐはっきりはしてゐないな。多少失望だ。岩は何といふ円くなめらかに削られたもんだらう。水苔みづごけも生えてゐる。滑るだらうか。滑らない。
台川 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)