水呑みずのみ)” の例文
馬鹿っ! 貧乏はしても嘉三郎だぞ! そこえらの水呑みずのみ百姓と縁組えんぐみが出来ると思うのか! 痩せても枯れても庄屋の家だぞ。
栗の花の咲くころ (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
私の母親は水呑みずのみ百姓で、小学校にさえ行っていない。ところが私が家にいた頃から、「いろは」を習らい始めた。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
山城の賀茂は社家しゃけでいながら、賀茂村から比叡山の水呑みずのみに達する広大な領地をもって居り、一族の女たちは国学と古文こぶんに凝りかたまって、みな独身で終ってしまう。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
たとえばここにある水呑みずのみコップのごときも上から見れば丸いが、横から見るとほぼ長方形に見える。
生物学的の見方 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
晩年の芥川龍之介あくたがわりゅうのすけの話ですが、時々芥川の家へやってくる農民作家——この人は自身が本当の水呑みずのみ百姓の生活をしている人なのですが、あるとき原稿を持ってきました。
文学のふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
『職人ふぜい。』と噛んで吐き出し、『水呑みずのみ百姓。』とわらいののしり、そうして、刺し殺される日を待って居る。かさねて言う、私は労働者と農民とのちからを信じて居る。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「アレ又引込ひっこんだ、アラ又出た、引込んだり出たり出たり引込んだり、まる水呑みずのみ/\」
いまごろの食うや食わずの水呑みずのみ百姓に二十両が二分でも、どうなり申しがしょう! これは死ねと言うことでがんす! 百姓から田地召上げるのあ、死ねということでがんす! 私
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
かつてはしがない水呑みずのみ百姓であったことを、近郷の者の忘れた頃に、そろそろと自分の家が源平時代からでも、その土地に住んでおったというような顔をするのは、普通の社会状態であったが
家の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私はそれを二十何年間も水呑みずのみ百姓をして苦しみ抜いてきた父や母の生活からもジカに知ることが出来る。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)