気附きづ)” の例文
旧字:氣附
足を少しうごかして、自分が足袋をはいているままで寝ているのに気附きづいてはっとした。しまった! いけねえ!
(新字新仮名) / 太宰治(著)
すると良寛さんは、さつきから自分の心の一隅いちぐうで、何かほかのことを、苦にしていゐるのに気附きづいた。何だか知らないが、或事が気にかかつてゐるのである。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
あんな事でも、姉さんの身にとっては、ずいぶん手痛い打撃なんだろうな、とはじめて気附きづいた。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ふと気附きづくと良寛さんは、一つの村の中を歩いてゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
R大の時など、その朝になって、はじめてはっと気附きづいて、あわてて出発したくらいであった。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ああ、いけない、とすぐに気附きづいて、はっきり眼が覚めた。喀血の前に、胸がごろごろ鳴るという事を僕は、或る本で読んで知っていたのだ。腹這いになった途端に、ぐっと来た。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ハッと気附きづいた。きょうは靖国やすくに神社の大祭で学校は休みなのだ。孤立派の失敗である。きょうが休みだと知っていたら、ゆうべだって、もっと楽しかったであろうに。馬鹿馬鹿しい。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
まだきっとあの茶壺のからっぽな事にはお気附きづきなさらず、相変らず日に四度ずつ見廻りに行っている事でありましょうが、お気附きなさらぬままで頓死とんしでもなさったならば、ばばさまも仕合せ
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
才兵衛は師匠から敬遠されたとも気附きづかず、わしもいよいよ一人前の角力取りになったか、ありがたいわい、きょうからわしは荒磯だ、すごい名前じゃないか、ああまことに師の恩は山よりも高い
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)