此市ここ)” の例文
雨滴あまだれ式の此市ここの女性が、厳粛な、赤裸々な、明哲の心の様な秋の気に打たれて、『ああ、ああ、今年もハア秋でごあんすなッす——。』
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
市場にはそれぞれ張店はりみせをして、青物、肉類、麦焦むぎこがし、乳、バタ、布類及び羊毛の布類を列べて、一切此市ここで交易商売が行なわれるのであります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
また西北原及び北原からインドへおくり出す羊毛及びヤクの尾等は皆此市ここへ持って来まして、単に此市ここ継場つぎばとしてパーリーの方へおくり出すものもあれば
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
自分はかう信じたからこそ、此市ここの名物の長沢屋の豆銀糖でお茶を飲み乍ら、稚ない時から好きであつた伯母さんと昔談をする楽みをさへなげうち去つて、明からぬ五分心の洋燈の前に
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかし羊毛類は必ずしもこのギャンチェ都会において仲買されてパーリーに出るとばかりはきまって居りませんけれども多くは此市ここから輸り出されるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)