此地こつち)” の例文
此地こつち與力よりき贅澤ぜいたくだと、かね/″\いてゐたが、しかしこれほどだとはおもはなかつた。おかげ但馬たじま歌舞伎役者かぶきやくしや座頭ざがしらにでもなつたやうながする。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「それがようござんすね、もと/\此地こつちかたでござんすさかいね、どないにか仏さんたちも悦ばれませう。」
念仏の家 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
さう言はれてしまふと、私は何とも言へないけれど、富山さんと逢ふの、約束してあつたのと云ふのは、それは全く貫一さんの邪推よ。私等わたしたち此地こつちに来てゐるのを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
三藏は六十幾番といふ札を提げて歸るのを面目なく思つたばかりでなく、此夏は自分の不成績であつた第一の原因の獨逸語を勉強し度く、それには此地こつちでなければ教師が無いと考へたからであつた。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
此地こつちへ来るまでは、僕は十分信じてをつた、お前さんに限つてそんな了簡りようけんのあるべきはずは無いと。実は信じるも信じないも有りはしない、夫婦のなかで、知れきつた話だ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「で、何日いつ御帰でありますか。明朝あした一所に御発足おたちにはなりませんか。此地こつちにさう長く居なければならんと云ふ次第ではないのでせう、そんなら一所にお立ちなすつたらどうであります」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)