かしは)” の例文
當分はかしはの林が迎へて送る。追々大豆畑が現はれる。十勝は豆の國である。旭川平原や札幌深川間の汽車の窓から見る樣な水田は、まだ十勝に少ない。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
かしはいとすぎ桂など生ひ茂りて、四時緑なる天を戴けり。昔も今も、羅馬人と外國人と、つねに來り遊ぶ處なり。
その一方の岸に添つて汽車が走るのであるが、この邊、かしははなく、ナラ林が四方に紅葉してゐた。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
そら先刻さつきから薄暗くなつて居たが、サーッといふ稍〻寒い風が下して来たかと見る間に、楢やかしはの黄色な葉が空からばらついて降つて来ると同時に、木の葉の雨ばかりでは無く
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
かしは突裂つんざく雷火いかづち前駆さきばし電光いなづま
魔女 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
丘の上には余等の外に人影も無く、秋風がばさり/\かしはの葉をうごかして居る。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
その左右にかしはの木が植ゑつけたかの樣に生え、それが紅葉してゐて、ところ/″\、雜草を切り開らいて、燕麥えんばくを刈り取つた跡がある野塚原野で、——この風景は丸で大きな造り庭と云つてもいい。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)