“檝(かぢ)” の例文
兵士(いくさびと)を隱し伏せ、鎧を衣の中に服(き)せて、河の邊に到りて、船に乘らむとする時に、その嚴飾(かざ)れる處を望(みさ)けて、弟王その呉床(あぐら)にいますと思ほして、ふつに檝(かぢ)を取りて船に立ちませることを知らず
況(いはん)や金薄(きんぱく)半ば剥げたる大窓の※(けづ)らざる板もて圍まれたるありて、大廈の一部まことに朽敗(きうはい)になん/\としたるをや。既にして梵鐘(ぼんしよう)は聲を斂(をさ)めて、檝(かぢ)の水を撃つ音より外、何の響をも聞かずなりぬ。
磯ちかく旅寝をすれば夜もすがら網引(あびき)やすらし檝(かぢ)の音(と)ぞする
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
更にその兄王の河を渡りまさむ時のために、船檝(かぢ)を具へ飾り、また佐那葛(さなかづら)三の根を臼搗(うすづ)き、その汁の滑(なめ)を取りて、その船の中の簀椅(すばし)に塗りて、蹈みて仆るべく設(ま)けて、その王子は、布(たへ)の衣褌(きぬはかま)を服(き)て
既に賤人(やつこ)の形になりて、檝(かぢ)を取りて立ちましき。