横過よこぎ)” の例文
そうしてまたぞっとしたのです。私もKの歩いたみちを、Kと同じように辿たどっているのだという予覚よかくが、折々風のように私の胸を横過よこぎり始めたからです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのやぶから時鳥が駒形の方へ飛んで来て上野の森の方へ雲をば横過よこぎっていて行ったもの……句の解釈は別段だけれども、実地には時鳥のよく鳴いた所です。
思はず銀之助はそこを飛出した。玄関を横過よこぎつて、長い廊下を通ると、肩掛に紫頭巾むらさきづきん、帰り仕度の女生徒、あそこにも、こゝにも、丑松の噂を始めて、家路に向ふことを忘れたかのやう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)