くぬぎ)” の例文
その後、火石の原にならくぬぎ、栗などの雑木が生い繁って平地と化したのであるが、そこへどこからともなく狸が移り棲んで繁殖したのである。
たぬき汁 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
岩山に生えたくぬぎの三年枯れの堅薪で炊いた飯の、一番下と釜の底とが、移す時綺麗に離れるのでなければ、太政官は其の飯を口にしなかつた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「…………。」足許でくぬぎの朽葉の風にひるがへつてゐるのが辰男の目についてゐた。いやにわびしい氣持になつた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
これから一里ばかり上ったところに、炭焼小屋があって、今はくぬぎの木炭を焼いているという話もした。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
秋三は山から下ろして来たくぬぎの柴を、出逢う人々に自慢した。
南北 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「………」足許でくぬぎの朽葉の風にひるがえっているのが辰男の目についていた。いやにわびしい気持になった。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
残雪の間には、崖の道までにじあふれた鉱泉、半ば出来た工事、冬を越しても落ちずにある茶色なくぬぎの枯葉などが見える。先生は霜のために危くくずれかけた石垣などまで見て廻った。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
団栗は、ならの木に実るのが第一に粒が大きく次がくぬぎかしという順になる。猪は団栗が大好物で、楢の実をふんだんに食った奴こそ、猪肉の至味として人々から珍重されているのである。
たぬき汁 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
団栗は、ならの木に実るのが第一に粒が大きく次がくぬぎかしと言ふ順になる。猪は団栗が大好物で、楢の実をふんだんに食つた奴こそ、猪肉の至味として人々から珍重されてゐるのである。
たぬき汁 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)