こうり)” の例文
ふとん一組とこうりが一つ、瓶詰びんづめの酒の空箱一つに世帯道具は納まった。移ってから月賦屋で買った小さな机だけが、そぐわぬ形で家庭の新しさを語っていた。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
あちらのこうり、こちらの梱をあけて、山のように積みあげた着替えの中から、手に触れたのをめくら探りに二枚つまみあげると、くるくると小ひもで結わえて
実はすこし悪い病であるが、留守をしながら、いつもは手をつけては怒られるような戸棚の中やこうりの底などをソッと明けてみるのが非常に楽しみだったのである。
鍵から抜け出した女 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と小次郎は、こうりの一つに腰かけて、帳場の佐兵衛をふり顧りながら、扇を胸にうごかしていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中には往来に面した方を、まるで汚らしいぼろ切れかむしろのような、古毛氈もうせんで蔽っている家もあった。……半裸体の奴隷達は船の中から歩き板を伝って、こうりを担ぎ出して居た。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
朝から小林太郎左衛門の店と河岸の前には、おびただしい行旅こうりょの荷物やらこうりやらが、淀川から廻送され、それをまた、門司もじせきへ行く便船に積みこむので、ひどく混雑していた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひょっとすると、こうりの底に何か書附けとなって残っているかもしれない
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)