“梣(とねりこ)” の例文
腰(こし)もあらはの梣(とねりこ)よ、草叢(くさむら)から生(は)へた汚れた夢のやうだ。生(いのち)の無い影の中(なか)に咲きたいといふ狂氣(きちがひ)の百合(ゆり)のやうでもある。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
その頭上には梣(とねりこ)や槲(かし)が、半かけの月光や星の光を、枝葉の隙からわずか零(こぼ)し、野葡萄(のぶどう)や木賊(とくさ)や蕁麻(いらくさ)や芒(すすき)で、おどろをなしている地面の諸所へ、銀色の斑紋を織っていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どちらを見ても、緑と花ばかりになつた。大きな骸骨のやうな楡や梣(とねりこ)や樫なども、堂々と、いかめしい生活を恢復した。森林地には、木がその奧底から躍動してをつた。
梣(とねりこ)よ、色蒼(いろあを)ざめた天竺(てんぢく)の赤脚仙(ジムノソフイスト)、えたいの知れぬ木、わたしの悲しい心の悦(よろこび)。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)