桜痴おうち)” の例文
川上は勝に乗って、七月に第二回の興行をこころみ、中幕には桜痴おうち居士新作の「大江山」を上演したが、これは不評に終ったらしい。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
が、坪内君が『桐一葉』を書いた時は団十郎が羅馬ローマ法王で、桜痴おうち居士が大宰相で、黙阿弥もくあみ劇が憲法となってる大専制国であった。
そして十歩ばかりも歩いた時、僕は左手に並んでいる二階造の家を見て、「ここが桜痴おうち先生と末造君との第宅ていたくだ」と独語ひとりごとのように云った。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
開業以前、建築中より登壇したる人というのに、末松青萍すえまつせいひょう、福地桜痴おうち、矢野竜渓りゅうけい末広鉄腸すえひろてつちょうがある。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
まず政治方面から戯曲家に転じた晩年の福地桜痴おうち居士を筆頭に、能書家と見られる方々を挙げると、故人では尾崎紅葉、依田学海、坪内逍遙、宮崎三昧、須藤南翠、夏目漱石、田山花袋の諸氏
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
この青軒先生こそはやがてわれをば桜痴おうち居士福地ふくち先生に紹介の労を取られし人にてありけれ。されどこのたびの訪問は初めて硯友社けんゆうしゃの諸先輩を歴訪せし時とは異りて容易に望を遂ぐる事能はざりけり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一番目は在来の大阪落城を桜痴おうち居士が改作したもので、団十郎の宮内のつぼねと新蔵の木村重成、この母子おやこの別れの場が最も好評であった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのときに私は榎本虎彦えのもととらひこ君からこんな話をきいた。又聞きであるから真偽は保証し難いが、桜痴おうち居士はそれに対してこう言っていたそうである。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)