朱羅宇しゅらお)” の例文
ふと見ると、屏風の蔭に、友禅ゆうぜん小蒲団こぶとんをかけて、枕元に朱羅宇しゅらおのきせるを寄せ、黒八を掛けた丹前にくるまッていた男がある。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その行燈の枕許まくらもとに、有ろう? 朱羅宇しゅらお長煙管ながぎせるが、蛇になって動きそうに、蓬々おどろおどろと、曠野あれの徜徉さまよう夜の気勢けはい。地蔵堂に釣った紙帳より、かえってわびしき草のねやかな。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お初は、お杉の紅勝ちの友ぜん模様の寝床の枕元にあった、朱羅宇しゅらおのきせるを取り上げて、うまそうに、一服して、長火鉢のふちで、ポンと叩いて、いくらか苦笑した。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
もっともうるしのような宵闇の中で、いつもの短い煙管きせるでなく、長い朱羅宇しゅらおの煙管を横っちょへ脂下やにさがりにくわえていましたから、曲者は煙草の火へ見当を付けて、私の眼のつもりで
綾衣は枕もとの煙草盆を引き寄せて、朱羅宇しゅらお長煙管ながきせるに一服吸い付けて男に渡した。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その婆やが、小鍋立ての支度をしている頃、女あるじは、朱羅宇しゅらおの長ぎせるを、白い指にはさんで、煙を行灯あんどんの灯に吹きつけるようにしながら、しきりに考え込んでいる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)