木香きが)” の例文
そのやうに湧きたつ木香きがに酔つてなんとなく爽な気もちになりながら日に日に新しい住居が出来てゆくのを不思議らしく眺めてゐた。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
そしてそこにも、まだ木香きがのするような借家などが、次ぎ次ぎにお茶屋か何かのような意気造りな門に、電燈を掲げていた。
蒼白い月 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
木香きがのぷーんとする白木の棺の中に、真白な布にくるくる巻かれて、誰が入れてくれたものか、黄色い花の中に寝ていた。その寝顔を、私は父の腋の下から覗いた。
なんという酒かわからないけれども罎詰めの正宗を飲んだあとでは程よく木香きがの廻っているまったりした冷酒の味がにわかに口の中をすがすがしくさせてくれるのであったが、さあ
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
肌さはりよきかの酒の木香きがのなかに日くるるまで
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
木組などの繊細かぼそいその家は、まだ木香きがのとれないくらいの新建しんだちであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)