木瓜もっこう)” の例文
わたしが妻籠つまごの青山さんのお宅へ一晩泊めていただいた時に、同じ定紋じょうもんから昔がわかりましたよ。えゝ、まるびきと、木瓜もっこうとでさ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……その仔細しさいを尋ぬれば、心がらとは言いながら、さんぬる年、一ぜん飯屋でぐでんになり、冥途めいどの宵を照らしますじゃ、とろくでもない秀句を吐いて、井桁いげたの中に横木瓜もっこう
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あれが織田信長おだのぶながの紋ですよ。信長が王室の式微しきびなげいて、あの幕を献上したというのが始まりで、それから以後は必ずあの木瓜もっこうの紋の付いた幕を張る事になってるんだそうです」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この奇遇のもとは、妻籠と馬籠の両青山家に共通な木瓜もっこうと、丸に三つびきの二つの定紋からであった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
偶然にも、その客は妻籠本陣の定紋じょうもんを見つけて、それが自分の定紋と同じであることを発見する。木瓜もっこうがそれである。客は主人を呼びよせて物を尋ねようとする。そこへ寿平次が挨拶に出る。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)