木暗こくら)” の例文
平家方の一将、梶原平三へいぞう景時は、どういう思惑があってだろうか、頼朝の潜んだ木暗こくらがりを見届けながら、岩上に立って味方のほうへ大声あげながら手を振っていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冷え冷えと青い木暗こくらがりをつつむ広大な城戸きどの内は、鑁阿寺ばんなじの七堂伽藍がらんをもあわせて、裏山にまで屋形の屋根を望ませていた。いうまでもなく足利党の宗家、足利貞氏の本拠だった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の笑い声は、もうふもと木暗こくらがりへ入っている。亭主は耳をおさえて舞い戻った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちどは歌垣のやみまつりを見物にゆき、どこのたれとも得しれぬ年上の山家妻に引かれて宮の木暗こくらがりでちぎッたことと。また、も一つの体験は、御厨みくりやまきへ遠乗りに行った麦秋の真昼であった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)