朝霧てうむ)” の例文
朝霧てうむ深し。郊辺小沢といふ所茶店ちやてん(泉屋善助)のかたはら小樹籬せうじゆりを囲て石作士幹いしづくりしかんの墓あり。墓表隷字にて駒石石くせきせき先生之墓と題す。碑文紀平洲撰せり。一里半福島駅にいたる。関庁荘厳なり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
朝霧てうむいまだはれず。水車の処に舟をよせて観たり。行々ゆき/\て右淀の大橋を見、左に桂川の落口を見て宮の渡の辺に到て、きりはれ日光あきらかに八幡の山平瀉ひらかたの民家一覧に入て画がけるがごとし。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
廿四日卯時に発し、朝霧てうむはれんとするとき、筑摩川の橋を渡る。此より浅間岳を望む。烟ののぼる焔々たり。此川おほいなれども水至て浅し。礫砂至て多し。万葉新続古今雪玉集みなさゞれ石をよみたり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)