朔風きたかぜ)” の例文
鉄格子てつごうしと手錠とで禿鷹はげたかの幽閉されてる墓穴の中を吹き過ぎていたが、なおいっそう酷烈悲壮なる朔風きたかぜは、これらのはとのはいってるかごの中を吹いていた。
折から立って来た朔風きたかぜに吹きまくられて、海上遥かに流され、場所も判らずに沈んでしまい、泳ぎも何にも知らない母親だけがたった一人、漁船に救い上げられて不思議の命を助かったのです。
朔風きたかぜつよい夜には、星の光も、するどいものです。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
朔風きたかぜさむあられふり
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
冬の朔風きたかぜからまもり、熱を起こさせる泥中でいちゅうの睡眠から防ぎ、死を招く雪中の睡眠から防ぐの用に立った。
通りすぎる人々の冷ややかな鋭い軽蔑は、朔風きたかぜのように彼女の肉を通し心を貫いた。