替玉かえだま)” の例文
わたしの考えじゃあ、久兵衛を殺して川へ飛び込んだのは、本人のお節じゃあねえ。泳ぎの上手な奴が替玉かえだまになって、水をくぐって逃げたのだろうと思いますね。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
どう解釈したらいいのだ。あれは照子のこつに間違いはないのだ。まさか死人の替玉かえだまがある筈はないからね
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
戸籍係りの方には何にもわからないで、少しの抗議もなく、替玉かえだまはきわめて容易に行なわれた。
自分に仕立てて、仕事場へ置いたんだ。その細工が過ぎて自分が殺される晩も、替玉かえだまに仕事場でゴトゴトやらしたのさ。まさか、その晩、自分が殺されるとは思わなかったろう
「あれは本当に同一人なのでしょうか。しや、百面相役者というのは、一人ではなくて、大勢の替玉かえだまを引っくるめての名称で、それが代るがわる現れているのではないでしょうか」
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
どうかして噂位聞いていたところで、まさかこれ程似ていようとは想像しないでありましょうし、その上、その男が源三郎の替玉かえだまとなって現れるなどとは、夢にも考える道理がありません。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あなたの替玉かえだまを作るのですよ。影武者ですね、丁度持って来いの人物があるのです。相当の報酬を出して下されば、命をまとに引受けてもいいという男があるのです。柔道三段というごうのものですよ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
君が股野の替玉かえだまになって一人芝居をやるのだ。股野は長髪だから、君の頭でいい。少しうしろへき上げておけばいい。そして、ベレ帽をかむり、目がねをかけるんだ。それで鼻から上は出来上がる。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)