曳船ひきふね)” の例文
今しも彼がたゝずんでゐる波止場の石段の下には近海通ひの曳船ひきふねが着いたところだつた。田舎風ゐなかふうの男女の客が二十人ばかり上つた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
渡船には、頭巾を冠った巡査が一人だけ乗っていて、寒さに手足をすぼめ、曳船ひきふねの掻き立てるすさまじい泡を眺めていた。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
月島つきしま埋立工事うめたてこうじが出来上ると共に、築地つきぢの海岸からはあらた曳船ひきふねの渡しが出来た。向島むかうじまには人の知る竹屋たけやわたしがあり、橋場はしばには橋場はしばわたしがある。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
地上を曳船ひきふねして来て、すなわち予定どおりこれを足守川の堰口せきぐちへ石とともに沈めることができた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸まで三崎丸を曳船ひきふねしてきて当時のままのありさまで船蔵におさめてある。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
月島つきしまの埋立工事が出来上ると共に、築地つきじの海岸からは新に曳船ひきふねの渡しが出来た。向島むこうじまには人の知る竹屋たけやの渡しがあり、橋場はしばには橋場の渡しがある。