普化僧ふけそう)” の例文
笠、尺八は持っているが、後世の普化僧ふけそうみたいなものではない。雑多な物乞い法師や旅芸人のなかに生じた一種の半俗僧といってよい。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
焙烙ほうろくで、豌豆えんどうをいるような絡繹らくえきたるさんざめき、能役者が笠を傾けて通る。若党を従えたお武家が往く。新造が来る。丁稚でっちが走る。犬がほえる。普化僧ふけそうが尺八を振り上げて犬を追っている。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ままよ、かりそめにせよ、普化僧ふけそう法衣ほうえを借りてある以上は、樹下石上も否むべきではない。道に任せて歩き、疲れた所を宿として草にも伏そう。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一月寺の普化僧ふけそうがぬかるみをまたいで来ると、槍をかついだやっこがむこうを横ぎる。町家では丁稚でっちが土間をいていたり、娘が井戸水を汲んでいるのが見えたり、はたきの音、味噌汁の香——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
わしは山科やましなの僧院にいる寄竹派きちくは普化僧ふけそうです。同じ僧院に、法月弦之丞のりづきげんのじょうというものが近頃まいっておる。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虚無僧寺史を見ると、それより以前、楠正勝くすのきまさかつが、普化僧ふけそうの群れに入って、宗門を漂泊していたことなどしるしてあるが、これは社会韜晦とうかいで、武者修行ではなかったであろう。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここは根岸の奥の一月寺げつじ普化僧ふけそう仲間で、俗に風呂入ふろいりとよぶ宿院である。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)