昧爽まいそう)” の例文
月夜には月光の色に、太陽の照る昼は、きらめく黄金色に、朝は昧爽まいそうのバラ色に、夕暮はあたたかいあかね色に、そして雨の夜は、正確にその濡れた闇の色に。
メリイ・クリスマス (新字新仮名) / 山川方夫(著)
読者はこの語によって、昧爽まいそうしずかな空気の中に匂う梅の花の趣を感じさえすればいいのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
天人のころもはけむりのようにうすくその瓔珞ようらく昧爽まいそう天盤てんばんからかすかな光をけました。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
一日昧爽まいそう櫛沐しつもくあたリ、打門ノ声甚ダ急ナルヲ聞キ、楼欄ニツテこれヲ観ルニ、客アリ。清癯せいく鶴ノ如シ。戸ニ当リテ立ツ。スミヤカニ倒屣とうしシテ之ヲ迎フ。既ニシテ門ニ入リ名刺ヲ出ダス。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
十三日の昧爽まいそうに、勝久は森田町の勝四郎が家へ手紙を遣った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
昧爽まいそうか、夕方か、乃至ないしは昼間か、そういう時間はこの句に現れていない。船中にある作者は、岸近く繋いだことによって、野を渡る微風を感じ、そこに流るる稲の香をなつかしんだものであろう。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)