旧馴染むかしなじみ)” の例文
毎日のように岸本は旧馴染むかしなじみの高台を下りて、用達ようたしに出歩いた。下町の方にある知人の家々へもそれとなく別れを告げに寄った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
岸本の帰国を聞いて戦時の巴里の消息を尋ねに来る新聞雑誌の記者、その他旧馴染むかしなじみの客なぞで、一しきり家の内はごたごたした後であった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
口の悪い支那の方の友達ばかりでなく、ややもすると旧馴染むかしなじみの「お新ちゃん」にすら「頭の禿げた坊ちゃん」なぞと笑われそうな気がして来た。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
莫迦ばかに涙もろかった娘時代の「お新ちゃん」に比べると、別の人にむかい合っているようなこの旧馴染むかしなじみと、それから鼻のせいかして、いくらか頭の重そうな眼付をしている妹とを前に置いて
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この人のふとった体格はくなった恩人にますますよく似て来た。こうした旧馴染むかしなじみの客に加えて、旅の話を求めに来る新聞記者なぞもあって、ほとほと岸本は底疲れに疲れている自分の身を忘れた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)