日雇ひやとい)” の例文
日雇ひやといの賃銭を集めて、うちに帰ると親仁の酒の酌をして、きゅうふたを取換えて、肩腰をさすって、枕に就かせて、それから、を取って、各々めいめい、二階に三人、店に五人
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中島は封筒を伊東さんに渡して、「接待婦なんて、あれァていのいい日雇ひやといの女中です。うちのやつは年さえ若ければ女給さんになりたいッて、いつでも伊東さんの事をうらやましがっているんですよ。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
孫の成長をたった一つの心楽しみに、日雇ひやといなどをしてようようと暮していたが、そのばあさんがやがて老耄ろうもうをして、いつでも手を打って一つ歌を歌っているのを、面白がって私たちは聴きにった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
日雇ひやとい、その時折の商人あきゅうどなどに身を変え、名を変えて、五十余名の者が、あらゆる知己や機会をたどって、吉良方の微細びさいな事でも聞きらすまいと、松坂町の塀囲いに、耳目をあつめている折なのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)