旅中りょちゅう)” の例文
ここで病家をとっているのは、長崎帰りのホンの旅中りょちゅうの内職だが、源内、医業にかけてもなかなかちょくで、殊に女には当りがよい。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しばらく人情界を離れたる余は、少なくともこの旅中りょちゅうに人情界に帰る必要はない。あってはせっかくの旅が無駄になる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鹽「やい盗人ぬすっと旅中りょちゅうの事ゆえ助けて遣るまいものでもないが、包をよこせ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しばらくこの旅中りょちゅうに起る出来事と、旅中に出逢であう人間を能の仕組しくみと能役者の所作しょさに見立てたらどうだろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いやおそれ入る。わざわざ、ここの旅中りょちゅうへ、お見舞とは、恐縮な」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくし平生へいぜいの通りKと口をきながら、どこかで平生の心持と離れるようになりました。彼に対する親しみも憎しみも、旅中りょちゅうかぎりという特別な性質をびる風になったのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)