敵持かたきも)” の例文
「ナニ、奇怪きっかいな言葉のはしばし——手を下して恨みを晴らすべきものをも、討たずに忍んでいると言うのか? そなたは敵持かたきもちか? これ、雪之丞」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
というわけには行かないのであるから、小次郎を一度打ち込むと、敵持かたきもちになったのも同じだといって、そういう彼の異常な執拗しつようを、同門の者はよくいわなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宇津木兵馬て人はどうやら敵持かたきもちのようだから、ここの間で手管てくだをするとうまい仕事ができそうだ。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「心願とは古風じゃないか、まさか敵持かたきもちというわけでもないだろう」
これからまた持役もちやくを替えて踊ってみてえんで……その机竜之助という剣術の先生、それは敵持かたきもちのお方でござんしたね、敵とねらう相手がちょうど船で清水の港へ来ているんで。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「時に、友様、わしは今までお前に向って隠していたが、実は敵持かたきもちの身なんだ」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)